

昨日は、コーマック・マッカーシー原作の小説を映画化した「ザ・ロード」のDVDの発売日で、Amazonに予約しておいたのが早速届きました。
原作が敬愛するコーマック・マッカーシーで、主演が大好きなアラゴルン、いやヴィゴ・モーテンセンとなれば、私的に買わないわけがない。
暗い、救いがない、何だかわからないなどなど、否定的な感想を耳にしていますが、その通りでしょうね。エンターテインメントじゃないから、単純に観て面白いというものじゃないと思います。
でも、私はこの映画には感動しました。父と子の絆に泣きました。
もちろんコーマック・マッカーシーの原作を先に読んでいますが、マッカーシーの淡々とした文章のイメージをヴィゴがよく理解して演じているなぁと思ったし、押し付けがましい表現などなしに、原作のイメージを損なうことのない作りだったと思います。
文学作品だから、映画が何を言いたいのかというのは観た人それぞれが考えればいいし、こういうことを言っているのだという解説は蛇足ですが、私は私なりの解釈でマッカーシーの明確なメッセージを感じており、最も感動するのはその部分です。
父親の何があっても必ず守ってやるという子どもに対する無償の愛と、父親亡きあと、何があっても絶対に父を忘れない、忘れなければ父はずっと一緒にいるという子どもの切ない願い。
どちらも身にしみて知っているから、胸に深くしみます。舞台がどのような状況だとしても、そうしたものは普遍的なものなのだと思います。
マッカーシーは、この作品を書く前に自身の息子を授かったというエピソードがあり、それを機に作品の内容も大きく変化したと思いますが、これはその最愛の息子に対する気持ちが痛いほど分かる作品だと思います。
私は大のマッカーシーファンなので、映画的な見方というより、どうしても文学的な見方になりますが、ほとんどが原作と映画は別物だと言わざるを得ない中で、この作品は原作を損なわずにより良くした数少ない映画のひとつではないかと思います。
舞台が文明崩壊後だけに、人類に対する、あるいは人間社会に対する何か大きな意味を投げかけているとする解説もありますが、私はもっともっと個人的なことだと思っています。
舞台は父と子の繋がりを強調するひとつの状況に過ぎない。そう思います。
宝物にしたい映画です。