
樋口一葉の『にごりえ』を読んだ。添付の画像と同じ文庫本を持っていたはずだが、結局読まずにいて、ちくま文学の森の『とっておきの話』の中の一編として初めて読んだところ、圧倒的な筆力に驚いた。
樋口一葉と言えば、国語の教科書でもお馴染みで、<樋口一葉=にごりえ、たけくらべ>というのはテストにも必ず出た。また言わずと知れた五千円札の顔でもある。
五千円札の顔は怖いのでお財布に入れておくのさえ嫌で、つい早く使ってしまえ!となるのだけれど、これからは敬意を持って大事にしようと思ったり…。
私は物心ついた頃から外国文学が好きだったので、日本文学はほとんど知らないと言っても過言ではないのだが(例外として太宰治と宮沢賢治だけは全部読んでいる)、洋の東西を問わず古典の名作と言われて残っているものはどれも素晴らしいから後世に残っているのだと今更ながらに思う。
日本文学に疎いので、つい外国文学と比較してしまうけれど、何日か前に書いた稲垣足穂同様、これもまたほとんど息継ぎなしの文体で、しかもリズムがあるので途中でやめられないというところがガルシア・マルケス的だ。
で、私はガルシア・マルケスの文体が大変好きなので、稲垣足穂も樋口一葉も好きということになる。今どきのライトノベルにはない、隅から隅まで字が詰まっているページを見るとわくわくしてしまう。
常日頃、ステージでは余計なMCなどいらないのではないかと思っている私だが、文学作品をして図らずもそれを証明できたような気がする。文学も音楽もノリとかリズムとかを途中で途切れさせてはいけないのだと。
やはり私はできるだけノンストップでやることを心掛けていきたい。文学も音楽もノンストップの迫力は魅力的だ。
何か圧倒的なものに出会いたいなと思っていたが、ひとつ文学の世界で出会えて嬉しい。樋口一葉が何故お札の顔になったのかがやっと分かったような気がする。